「あと半生」

1999 July17

Words By Kenji Kanno!


人生は放物線

ゼロから出発し

長い旅路の起点において

さまざまな物質と精神を獲得しながら

頂点を目指す


純真無垢な10代に

好むと好まざるとに拘らず

詰め込んだ一般教養

学問では満たされない心の渇望を

文学が音楽がそして美術が

芸術が埋めて行く


学問の追究を目的として

望んで籍を置いたはずの

大学に遊んで

心が渇望し異性を求める


高度成長期の

インフレ社会にあって

貨幣の価値が下がる中

借金に借金を重ね

インフレをさらに加速させる


給料の上昇はどう足掻いても

物価の上昇には追いつけず

価値のない貨幣だけが勢い良く

この世を回る


そんな中

人並みに恋をし

人生の伴侶を得て

回りの良いカネを当てにして

建売を購入する

形だけは立派な一家の主となる


ジャパン アズ ナンバーワン

経済で世界的なお墨付きを得たはずなのに

バブルが弾け未曾有の経済危機に襲われる

企業改革の名のもとに

リストラの暴風が吹き荒れ

失業者が溢れる

物価も給料も上昇しない

何事も動かず止まった世界が訪れている


早40年

人生の折り返し点にあって

今までにとれだけの物質を

どれだけの精神を得てきたのだろう

この折り返しを過ぎれば

放物線のように

これまでのすべての蓄えを吐き出しながら

残る半生を生きなければならない

吐き出す物質と精神がなければ

身軽な身体は坂を転げ落ちるに違いない


精神だけは豊かでありたい

坂を転げ落ちないように

精神だけは入れ物を大きくし

毎日心の糧を溜め込んで

どっしりと動かぬようにしていたい


この今は心の安定が必要な時である

あと半生を悔いないものとするために


SelectMenu TopPage