「団地」

2000 Mar.18

Words By Kenji Kanno


16年が過ぎた

周りはすべて山で

建売10棟

数10人だけの住民で

遠く寂しい団地


辺りを散策すれば

新緑の春は山菜

紅葉の秋は茸など

四季折々の楽しみが

身近にあったが

車がなければ暮せない

辺鄙なところだった


16年前の

小雪のちらつく2月の寒い日

その内の1棟が

私と連れ合いの

生活のよりどころとなった

30歳の春である


マーケットがある

病院がある

その他の生活に必要な物は

殆どが団地の中で手に入る

計画人口1万人までもうひといきである

バスは30分間隔で走り

車がなくても暮せるようになった


しかし山はすべて消え

もはや散策する対象が消えている

団地の成長と共に

ここでも小さな自然が消えて行く


便利さも貴重であり

それがなければ暮すに苦労する

自然も大事で

それがなければ心が潤わない

どちらもほどほどが良いのかもしれないが

中途半端には物事は進まない


団地は計画的に発展しており

今の現状は何年も前から

想像ができたことである

むしろ団地の住民としては

喜ばしいことではないか


数キロ先に目を転じれば

素晴らしい自然が

網膜に優しい映像を結ぶ


身近な散策とはいかないが

車で20分も走れば

山菜豊富な山懐である


この団地を誇りに思う

利便な住宅地の条件も

豊かな自然も併せ持った

貴重な団地である


この絶妙のバランスを

いつまでも保てる団地であって欲しい

しばらくこの故郷の団地を去るにあたって

そう願わずにはいられない


SelectMenu TopPage