「愛の原点」

1999 Sept.2

Words By Kenji Kanno!


秋雨の街は優しかった

ピアノを買い求めた楽器店を

喫茶店の窓越しに見ながら

20年前のノスタルジア

愛を育てた街に佇む


君と初めて暮らした

アパートの階段を上がる

今だれが住むかは分からない

何をするということもない

ただ一段一段を噛み締めてみたかった

それだけのこと


君と歩いた

川沿いの道を歩いてみた

見知らぬ人が通り過ぎる

目的があるわけではない

ただ昔歩いた道を歩いてみたかった

それだけのこと


君と来た喫茶店にいる

街を横切る川に架かる

幾つもの趣橋の一つを渡り

大正ロマンの煉瓦造りの粋を見て

愛を囁いた川沿いの喫茶店

昔と変わらぬ佇まいに心が和む


20年前に愛を育てた街に来て2週間

いたるところにある君と僕の軌跡に触れて

愛の原点を探している僕がいる


もう酸いも甘いも噛み分けた大人なのに

こんな物思いに耽ける自分に苦笑い

暫しコーヒーのほろ苦さに酔う


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