「不思議」

2000 Mar.11

Words By Kenji Kanno


寂寞(ジャクマク)の空間にひとり佇む

身も凍る寒気が

すっぽりと辺りを包み

周りはすべて雪に埋もれている


いま佇むこの空間だけは

水蒸気が熱く立ち込め

恵みの湯が凍る体を癒している


ときおり吹雪が音もなく舞い

隠しようのない顔を白く染め

弛緩した体を引き締める


不思議だ

周りはすべて凍る世界

純白の雪に触れれば

それを拒むかのように

手がちぎれるほどの冷たさだ


そして手を湯に浸ける

快い温もりに包まれる


相反するものが

隣り合わせで存在している

自然の造形に不思議を感じるのだ


人生とはかくもあろうか

凍る世界の傍らには

癒しの温もりがある


いま確かに体感しているように

人生の不思議もきっとある


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