古(いにしえ)

2000 June 15

Words By Kenji Kanno


30数年振りに日光東照宮を見た

絢爛豪華の一語である

家康の権勢が如何に強大であったかを

肌で感じることができる

しかし将軍家の威信の元に

建立に携わった職人達が

血の滲む思いをしたことを想像して切なくなった

きっと人柱になった者も少なくはなかっただろう

その古の人々が今に集まり

自分達の成し遂げた偉業とも言うべき

この文化遺産を目の当りにしたとしたら

何を思うのだろう

辛いことはすべて忘れて

350年の歳月を経ても

些かも変わらない絢爛豪華に

それを成し遂げた誇りと満足感に

酔いしれるのだろうか

或いは今なお家康の権威を

世に知らしめて憚らない傲慢さに

辟易するのだろうか

人間は何かを成し遂げるために邁進することに

精神的な充実感を得るのではなかろうか

前者であると信じたい


25年以上前に

合唱という目的のために集まった

仲間とともに東照宮を見たが

今またここに集まり語らうことは

自分達の成し遂げた古の栄光である

それは定期演奏会のための

小さな小さな努力であるが

その成功と感動は泰然としている

その感動を分かち合った者達が

古のロマンに花を咲かせる


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