「紙芝居」
1999 Oct.11

Words By Kenji Kanno!


カーンカーンカーンカーン

乾いた拍子木の音が

町内に響き渡る


5円玉を握り締めて

家々の小さな隙間に陣取った

紙芝居屋の自転車の前に来る


もう先客が何人か来ている

待ち遠しい時間ととともに

10人程度のガキどもが集まった


何でできているかは判らない

パリパリとした

手のひらよりも大きな薄い煎餅に

とろろ昆布をサンドして

ソースをふったもの

赤紫蘇色の梅ペーストをサンドしたもの

そして水飴


思い思いの食べ物を

5円でいただく

ウキウキした瞬間


いよいよ紙芝居が始まる


今日は月光仮面

颯爽とバイクに跨った

白頭巾にサングラスの

ヒーローが悪を小気味良く

叩いて行く様を

声高らかに

迫力あるダミ声が導いて行く


思わず引き込まれ身を乗り出す

純な幼さが懐かしい


娯楽の少ない時代に

紙芝居はシアターだった


拍子木の音はもう聞こえない

しかし

思い出の拍子木は

心の中で

いつまでも止むことはない


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