「機関車」
1999.May13
Words By Kenji Kanno!


優しい風貌の鉄の巨人が
両手両足を激しく回しながら
轟音と汽笛を鳴らし
音の軌跡を描きながら
向こうからやって来る

その迫力は
幼い心には初めての
後ずさりするような感覚を
心の奥深くに刻み込むのに
十分な快い衝撃を与えた

これが機関車というものか
眼前に迫った
丸に十字の風貌には
D51(デゴイチ)の
プレートが目に眩しい

踏み切り越しの巨人は
再び汽笛を
白い蒸気を吹き上げ
長く高らかに鳴らした

何とかっこいい有り様だ
黒光りする肌に
黄金の縁取りが映え
鉄の巨人は堂々としていた

少年は幼心に恋をした
来る日も来る日も
恋人を求めるように
踏み切りに立って
憧れの鉄の巨人を見送った

古き良き時代の映像が
今まざまざと蘇る
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