「虚無の呪縛」
1999 Oct.21
Words By Kenji Kanno!
2000年には何歳になっているだろう
二十歳の頃に考えたものである
やがて過ぎ行く時が想像を現実に変えて行く
ずいぶん遠いことのように感じたものだが
今その歳になった
あっという間のことである
人生80年
今の倍の歳を重ねることは至難の技である
21世紀が想像の対象だった遠い昔
40年前の幼年期
30年前の青春期
20年前の青年期
21世紀は科学技術の進歩が
想像を超えたものになっていると思ったものだが
現実の進歩は緩やかなものだった
人類が月に立ったのは30年前である
その時には21世紀を待たずして
火星をも征服してしまうのではないかと思わせた
医学は未だ癌を克服してはいない
21世紀に残された課題は多く
30年前に想像した
格段に進歩した世界とはかけ離れている
しかし精神世界だけは
人間の常として虚しさだけを募らせ
古の昔から変わらない
想像の対照とはならず
急激な進歩も緩やかな進歩もないのだ
歳を重ねるたびに
虚しさは更に虚しさを重ね飽くことがない
虚無と退廃をことさら意識しているのではない
人間の心を支配するものは
喜びよりも虚しさなのだ
虚しさを打ち消すために
愛があり芸術がある
21世紀を迎える前に
進歩のない精神世界を
ひとつひとつ紐解いて
虚無の呪縛から心を開放する術を身につけよう
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