「無の境地」

1999 June16

Words By Kenji Kanno!


無の境地が素晴らしい筈もない

 

人間には抗しきれない業があり

それに素直に従えば

心地よい悪しき心に支配され

精神の呵責に苛まれる

 

業に支配され

されるがままの薄弱な意志は

やがて無の境地に憧れる

 

無の境地とは死に他ならない

全身麻酔から覚めた時の

空白の時間と同じように

何の意識もない世界である

 

生にあって無を考える時

それは憧れとなるのだ

 

死の世界は不毛であり実体がない

何もない世界なのだ

 

業は生という大海原に浮かぶ

心という船である

凪に甘んじれば

どこまでも突き進み節度を失う

時化にさまよえば

しっかりと舵を握って波と戦う

 

心は振り子のように

業と理性の間に揺れている

 

さまよいが生きる証となり

無の境地は神となる

釈迦やキリストのように


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