「野良猫」

1999 Sept.23

Words By Kenji Kanno!


黒白と銀

おまえたち2人は

どこで出会いどこで結ばれ

ここにやって来て

子猫を産んだのだ



玄関を出るたびに

どちらかが塒の物置から

飛び出して来て

門扉の楓の葉に隠れ

こちらを伺う



その目は明らかに哀願の目である

そっとしておいて欲しい

子供が産まれたのだ

そう言っているに違いない



何もしないよ大丈夫

そのたびに僕は言っている

だから安心して

ゆっくり休んでいいんだよ



飲み水も食べ物も用意するから

安心して3匹の子猫を育てるがいい



この団地には

至る所に野良猫が闊歩している

5m歩くたびごとに

猫が逃げ去る



団地を徘徊すれば

食べ物に困ることはない

雨露を凌げる場所も多々あるだろう

野良猫にとって

この地は天国なのだろうか



否である断じて否である

野良猫の多さは

この地に住む人間のだらしなさを

如実に現わしている



心無い誰かが

飼い猫を捨てた結果が

現れているに過ぎないのだ



家でしっかりと面倒をみれば

食べ物を漁る必要もなく

雨露を凌げる場所を

死に物狂いで探す必要もない

また必要とされない

子供を産むこともなくなるのだ



野良猫には病気が蔓延っている

ノミやダニや猫エイズ

伝染性の病気に犯されていることが多い



野良猫が悪いのではない

発端はすべて人間にある



何かの縁で我が家を塒とした

5匹の野良猫家族

そっと見守り

安らかな塒とすることが

良いか悪いかは定かでない



この冷たい秋雨の降る

物哀しい季節に

ただ見守ることしか

今の自分にはできない


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