「最後の手紙」

1999 June11

Words By Kenji Kanno!


愛するあなたへ

今日で何日が過ぎたのでしょう

あなたに恋の告白を受けて

わたしもあなたが好きですと

悦びを押さえ切れずに

思わず涙を浮かべながら

応えた日から


いろいろなことがありました

二人で歩いた公園も

二人で泣いた映画も

二人で築いた全ての物語が

走馬灯のように脳裏を行き交います


あっという間の1年が過ぎました

楽しかった

とにかく楽しかった

あなたとの日々は至福の時でした

何物にも勝る幸福感をわたしに与えてくれました


それなのに何故

何故に今

この最後の手紙を書かなければならないのでしょう


お互いに何が足りなかったのでしょう

あなたもわたしも恋愛を楽しみました

素敵な恋人としてお互いを求め合いました

何物にも勝る若さがお互いを結びつけ

新鮮な鳥もちのように離れることがありませんでした


しかしそれは.....

お互いの肉体に陶酔していただけではないでしょうか

真剣に意志を持って愛を育もうとしたでしょうか


心が満たされると怠惰になります

あなたもわたしも

お互いにすべてを与えることで心が飽満していました

ふと我に返った時

愛という言葉がどこにもないことに気がつきました

ただ逢って遊んでお互いを求め合い別れて行く


人間は心に怠惰を感じた時に

これで良いのかと真剣に考えてしまうものです

愛するとはどういうことなのか

わたしは真剣に考えるようになりました

それはとりもなおさずあなたとの将来のことです

今こんなに求め合っているのだから

将来の伴侶と決めても何らおかしくはないでしょう

わたしはあなたが好きです


先日わたしはあなたに将来について訪ねましたね

あなたは真剣に取り合ってはくれなかった

まだ早いの一点張りで

わたしは20(ハタチ)であなたは22

どうして早いのかわたしには分からなかった

将来の保証を求めるわけではないけれど

一緒に暮らしたいと思うのは自然なこと

むしろそう思わない方がおかしなことです


この話をあなたにしてから

あなたはわたしに逢うことを躊躇するようになりましたね

あなたにとってわたしとはいったいなんなのでしょう

単なる欲望の捌け口なのでしょうか


あなたと別れることは辛いことです

しかし将来設計がないのなら

これ以上一緒にいても何の意味もなくなります

すでに肉体のすべてを何度も与え合っている二人だから

次に与えるものは心しかないのですから


わたしは暫くは立ち直れないかもしれません

でも決して挫けはしません

あなたを愛したことは事実で消しようのないことです

それを今後の糧として強く生きて行きたいと思います


もうあなたに逢うことはないでしょう

どうぞ幸せに生きて下さい

この二人の1年に感謝します


それではさようなら

堪らなく寂しくて頬を伝う涙が止まりません


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