「スケート」

2000 Feb.25

Words By Kenji Kanno


きりりと肌を刺す

真冬の冷気の中で

土曜日の深夜に

遊びの広場に集合


隊長の号令のもと

何度も何度も

バケツの水をばら撒いて

20m四方の広場を凍らせる


齢一桁の自分には

重労働である


手早く整然とそして静かに

カミナリ親父に見つからないように

慎重に作業を進める

見つかったら最後

大目玉である


広場とは言っても

民家に囲まれた

ただの空き地であり

生活道路の一部なのだ


準備完了

明日は早起きで

まだ誰も起き出さないうちに

スケートで一汗かくのだ

そのためのスケートリンク作りである


楽しみがある時は

早起きなど何の苦にもならない

まだ暗いうちに起き出して

下駄スケートを抱えて

広場に集合


もう皆がいて滑っている

急いで下駄スケートを履いた

すいすい快調である

だが20mは数秒で滑り終える

何度も何度も往復する


古き良き時代

こんなことを数年続けたものだ


刃以外は木製の下駄スケートは

長靴に装着可能な

金属製のものに変わった

長靴にしっかり固定できるので

少々の無茶な滑りも可能になった


スケート場に行けるようになったのは

中学生になってからである


60年代はスケート場が

そこ彼処にあったものだ


10年離れた姉から

クリスマスプレゼントに

ハーフスピードをいただいた

レンタルではなくマイスケートである


幼き日の鍛錬の賜物

華麗に鼻高々にリンク狭しと滑走する

追いつける者はそうはいない

胸高鳴る若き日の思い出である


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