「自分の存在を確かめる」
1999 Apr.4
Words By Kenji Kanno!


箱根の森に咲き誇る
恋する娘盛りのような
華やかさとしおらしさを
湛えて咲く山桜は
何物にもまして美しい

桜は清く散るから潔い

そんなことなど
気にしてなるものか

女々しくて何が悪い
君に愛を告げずに
身を引くなんて

桜はすべての人に
満開の華やかさと
散り際の潔さを
表現している

ならばこの彫像は何だ
この絵画は何だ
慟哭の果てに
すべてのエネルギーを
傾注した結果だ

ありふれた恋は作品となり
満たされぬ心を癒す

彫像を照らすライトが
山桜のジオラマを
壁面に映す

彫像の白とジオラマの黒が
潔さと女々しさを逆転させて
怪しく光る

侭にならない君を想い
箱根の森の美術館に
自分の存在を確かめる

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