「東京」

2000 Mar.2

Words By Kenji Kanno


御茶ノ水から神保町へ向かう途中の楽器店で

12、000円のフォークギターを買った

YAMAHAのギターである

そのギターは今も私の傍らで現役である

寄り添う譜面台にはオリジナルソングの楽譜が立て掛けてある

住まいは変わっても25年変わらぬ光景である


また名前は忘れたが

その近くには何時行ってもクラシック音楽が荘厳に響いている

螺旋階段の印象的な喫茶店があった

チャイコフスキーのスラブ行進曲が私のお気に入りだった


東大でも明大でもなかったが

神田川に古本屋街など

学生に優しい雰囲気で溢れていて

よく行ったものである


渋谷界隈も好きだった

代々木からNHKを過ぎ神宮そして原宿へ

確かそんなコースを歩いたものである


しかしほとんどは歩けないと言った方が正解である

電車ではどこにでも行けるのだが

駅周辺で遊ぶのが関の山である

東京出身の仲間に尋ねても分らないことが多い

東京はそれだけ広くまた移動は電車であり

ここをこう歩いてあそこに行く

などと流暢なことを言うことはあまり無いような気がする

もちろん身近な距離にある目的地はこの限りではない


広島が仙台が札幌が渋谷であり新宿であり池袋であるのだ

大都市の集まりが東京なので

自ずと好きな地域があって

仙台に住んでいるものが広島を知らないように

東京すべてを手に取るように把握することは

地元の者でもできないのが普通である


芝や虎ノ門などオフィース街には

仕事でよく行くのだが

この辺りは仕事をするところで

街としての面白みがない

きっと面白いところも多々あるのだろうが

探せないでいる


25年振りに東京で仕事をすることになった

25年前は学生であり

社会人としては数ヶ月仕事をしただけである

当時とは何か変わっただろうか

東京は変わるべくもないが

当然のことながら私は歳を取った

東京という街を再認識し

歳相応の発見をしてみたい

東京は優しさを返してくれるだろうか?


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