「梅雨の別れ」

1999 July7

Words By Kenji Kanno!


もう何年前でしょうか

夢の世界の別れだったのかもしれません


あなたが23歳で私が20歳

あなたは社会人でしたが

まだ私は学生で首都圏に住んでいました

いわゆる遠距離恋愛

私は数ヶ月おきにあなたに会いに帰って来ましたね


夏の海辺で知り合って

翌年の6月まで二人とも一生懸命に恋愛しました


私は遠距離恋愛に何の違和感も感じることなくそれをエンジョイしていました

しかし愛する人が側にいないもどかしさが心の不安定を誘い

あなたはそれに耐えられなくなっていたのですね

鈍感な私は気付きませんでした


そんな関係が長く続くはずもありません

6月の雨が長く巷を濡らしている時期に別れが来ました

私は別れそのものを許すことができませんでした


別れが決定的となった日の夜中に家を出て私はひたすら歩きました

小ぬか雨がシトシトと降っていましたが

傘をさすこともなくただ歩きました

思い出を靴底に捨てながら


別れをあざ笑うかのように公園の道端に紫陽花が妖艶に咲いていました

ハロゲンライトに照らされて紫が鮮やかに浮き出ていました

私は思わずその一輪を折り取りしっかりと握り締めました


足の向かうところはあなたのアパートでした

だめなことは判っていても諦めきれず惨めでした

あなたへの愛はそれだけ深かったのかもしれません


あなたの目覚めを夜通しあなたの部屋の前で待ちました.....

やはりだめでした


あなたの会社への出勤途上を一緒に歩きながら

「おまえはこの花よりもひどい女だ」

とあの折り取った紫陽花をあなたに投げつけましたね.....


梅雨になると思い出します

一生この汚点を胸に秘めながら生きて行かなければなりません

それが私のあなたへの償いのような気がします


忘れることのできない「梅雨の別れ」から何年もの時が移ろいました

しかし昨日のことのように鮮やかに蘇ります


あなたには微塵も覚えていて欲しくはありません

私だけの愚かな思い出となっていることを祈ります


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