「夫婦の情」

1999 July5

Words By Kenji Kanno!


テレビでは

名ばかりの夫婦が

共に罵り合って

見世物となっている


古今東西

同じことが何度も

繰り返されてきたことだろう


そんな番組が組まれる時代は

平和なのか世も末なのか

いずれにしても見るに耐えない


見世物となっている夫婦にも

愛し合った時が必ずある

互いに愛して

離れられなくなって結婚する

それが普通の生業である


しかし.....

それはおめでたいこととは思えない

結婚した時から

愛は創造すべきものとなり

労働と共に

築くべきものとなる

そんな有り様が

おめでたい筈もない

結婚には心の痛みが伴うのだ


それでもなお

共に暮らすのは何故なのか


人間は総じて

寂しさの中で生きている

どうしようもない寂しさを

お互いを思い遣る心が

和らげて行く


夫婦の生業とは

お互いを思い遣る心

そのものである

それが何物にも替え難い情となる


透き通ったグラスのような

上澄みの酒に酔いしれて

眠りを貪れば

もはや深みと渋みの

芳醇な澱みは味わえない


夫婦の情は

どんな芳醇な酒よりも

深奥な美酒である


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