「優駿」

1999 June6

Words By Kenji Kanno!


パドックを颯爽と行く

優駿を羨ましく見る


今日は東京優駿


万単位の仲間から

選りすぐられた四歳馬


その頂点を目指して

今まさに雌雄を決しようとしている


彼らは走るための血統を受け継ぎ

走るためにすべてを捧げている

その一途さには一点の曇りもない

純粋であり健気である


その持って生まれた使命に

物の哀れを感じ

憧れと羨望を禁じ得ない


人間は何を血統として受け継ぎ

何を使命としてこの世に誕生したのだろうか


今まさに走ることの使命に燃えて

優駿の瞳は輝き澄んでいる


彼らの優劣は数分後には決する

短い時間の中に

すべての資質を出し切り

ただただ走るのだ


ゴールを駈け抜けた結果がどうあれ

最後の瞬間には

それぞれが使命を果たした満足感を瞳に湛え

それは清く澄んでいるに違いない


人間はこの優駿のように一途になれるだろうか

輝く澄んだ瞳になれるだろうか

一点の曇りもなく物事に突き進むことができるだろうか


人間は複雑怪奇な心を受け継ぎ

好むと好まざるとにかかわらず

心の決する使命のために行動する

それは時として辛く悲しいことである


叶わぬ想いを優駿に託し

精神世界の美しさを愉しみながら

一途な心は彼らと同化している


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